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いまさら何を、と言われるかもしれませんが、毛バリほど面白く、どこまでも興味をそそる釣り道具はそう多くありません。 ちょっとした形やサイズの違いで釣れたり釣れなかったりと、その奥行きには限りがなく、ですから毛バリを駆使するテンカラやフライという釣りは、やればやるほど面白く、飽きることがないのでしょう。 たとえばA、B、C、D、Eという5種類の違ったタイプの毛バリがあったとします。水温の低い早期にはAでなければ釣れなかったのに、ちょっと水温が上昇しただけでBが良くなり、しかしその夕方にはCが、さらに季節が進んだらDとEが最も釣れる。そんな具合に、毛バリには明らかに適材適所というものがありますから、どうそれを見極めてヒット率を高めていくか。汲めども尽きない部分です。 テンカラにドップリ嵌まってから今日まで、一度としてやめたいと思ったことがないばかりか、ますますこの釣りに対する興味が募っていくのも、そうした毛バリの奥深さがあればこそと、つくづく思えてなりません。 |
●毛バリの重要性 毛バリは何でもいい、そう断言する人もいますが、私はその意見には組しません。水温や気温の違いや場荒れ具合の多寡によって、明らかに「適した毛バリ」と「適さない毛バリ」があるからです。場荒れの少ない川や、放流直後のスレてない期間は別にして、1種類の毛バリで「すべて」通用するほど、最近の渓魚は甘くありません。 活性が極めて高く、どんな毛バリでも有効というケースは確かにありますが、それはシーズン中のごく僅かな期間であって、むしろそうでないケースが圧倒的に多いのです。 昔のテンカラのように、いい時期だけしか釣りをしない、と割り切ってしまえばどんな毛バリでも一向に構いませんが、2月の解禁から10月の終期まで、シーズンすべてをテンカラで通そうと思ったら、とてもそうはいかないのが昨今の現状です。 僅か数cmのテールの有無によって釣れたり釣れなかったりと、その明暗がはっきり分かれてしまう。それが毛バリという道具が持つ、そもそもの本質であって、難しくも面白いところなのです。 |
●試してみれば一目瞭然 では、なぜ毛バリは何でもいい、という極端な意見が飛び出してくるのでしょうか。その理由は二通りに解釈できます。 まず一つは、そうでないことは解っているが、初心者のために敢えてそう主張している場合。つまり「テンカラは易しい釣り」ということを強調するために、敢えて毛バリは二の次三の次と言っているのであって、本当の所は、多かれ少なかれ毛バリの重要性を知った上での主張ということになります。「毛バリを難しく考えず、とにかくテンカラをやってみたらいかがですか」というわけです。 もう一つは、多種類の毛バリを使いこなすことなく出されてしまった早計ともいうべき意見です。 「そんなことはない。色々な毛バリを試した結果、毛バリは何でもいいという結論に達した」と言う人もおそらくいるでしょうが、実はその試し方が問題なのです。本当に多種 多様の毛バリを、ありとあらゆる条件下で試してみたら、そんな結論が出るはずがないのですから。 たとえば、Aというタイプの毛バリでバンバン釣れたとしましょうか。その日は、それ以外の毛バリには見向きもせずに釣り続け、他のタイプで釣れるか釣れないかを試そうとしない。これでは何も理解できません。 Aタイプでバンバン釣れた時点で、他のタイプB、C、D、Eを使ってみて、やはりそれでも同じように釣れた。そういう結果が出たとすれば、毛バリは何でもいいという点を証明できるわけですが、しかし、こういう試し方をする人はなかなかいません。Aの毛バリでバンバン釣れるものですから、そのことだけに夢中になって、他の毛バリを試すことなく1日中過ごしてしまう。そういう人がほとんどなのです。 もしもその時点で、他のタイプを色々使ってみれば、釣れる毛バリと釣れない毛バリの有無がはっきり理解できるはずです。ひいては、その時点で最も効果的な毛バリ、つまり適材適所が解って、それまで以上に釣れるようになり、後のテンカラがさらに面白くなってくるのですが。 |
●適材適所を識るために 私が毛バリを試す場合は次のように行います。 まずは適材適所と思われるタイプの毛バリを何本か試し、それでバンバン釣れるAに行き着いたとします。 その時点で再び違ったタイプの毛バリを試し、本当にA以外では効果が薄いかどうかを再確認します。つまり、自ら追試を行ってみるわけで、もしそれでAだけがバンバン釣れたとすれば、その時期その条件下では、Aタイプの毛バリが適材適所ということになるわけです。 こういう試し方をしないかぎり、季節、場所、時間にマッチした毛バリ、つまり毛バリの適材適所を理解することはできません。 |
●テンカラ上達への近道 つい先日のことですが、22番以下の小さな毛バリ以外どんな毛バリも通用しないという、極めてシビアな釣りを、やはり経験してきました。 緩やかな瀬で羽化するユスリカと、それを盛んに補食するヤマメのライズ。そんなチャンスに遭遇した私は、迷うことなくユスリカの成虫を模した22番サイズの毛バリを結んで水面に流してみました。 それで立て続けに4尾。出方が大胆だったので、ひょっとすると大きなサイズの毛バリでもと考え、16番、8番、20番のドライタイ プ、さらには10番、12番、14番のウエットタイプをそれぞれ試してみたのですが、結果はすべて不可。 で、再び22番に戻したところ立て続けに2尾、なおかつ出が悪くなった時点で、さらに小さな24番に替えて2尾という結果が得られました。 この例でも解るように、その時点の適材適所は、22番以下の小さな毛バリだったわけで、それを用いなければ、1尾のヤマメも釣ることができなかったかもしれないのです。 そんな小さな毛バリは、どんなに釣れても使いたくない、という意見の方もおられるかもしれません。そういう拘りは大いに結構ですが、そのことと、釣れる釣れないという事実関係は別問題です。 毛バリはなんでもいいとする本意が、「色々な毛バリを使えば釣れることは解っていても、あくまでも1種類の毛バリで押し通す」という意味合、あるいは「初心者向けのメッセージ」ということなら理解できますが、条件の違いによるタイプ別サイズ別それぞれの有効性までをも頭から否定してかかるものだとすれば、これはもう曲論でしかありません。 毛バリの本質を理解して適材適所を識る。それこそが毛バリという道具を使いこなすことであって、すなわちテンカラ上達への近道でもあるのですから。 本文初出誌・『ハローフィッシング』(週刊テレビ) |
| 渓愚の技法 | ||
| ●なぜ魚は毛バリに食いつくのか | ||
| ●テンカラの流儀 | ||
| ●テンカラとフライその新たな兆し | ||
| ●毛バリを使いこなす | ||