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「テンカラを音楽にたとえるとしたらJAZZ」
そう力説するのは、釣り雑誌の挿し絵やイラストでお馴染みの川北卓史画伯である。
はるか昔のことになるが、曲がりなりにもテナーサックスのマウスピースをくわえたことのある私にとって、それは願ってもない話題だったので、ヤマメのように素早く口を開いてこう答えた。
「分けてもブルースが一番近い」
ブルースの基本形は、一定のコード(和音)進行を備えた12小節の楽曲で、小節ごとのコードを記号化すると、たとえばこうなる。
‖C/C/C/C/F/F/C/C/G/F/C/C‖
つまりCコード4小節→Fコード2小節→Cコード2小節→ Gコード1小節→Fコード1小節→Cコード2小節。で、計12小節。この繰り返しである。
それぞれ曲想は異なるものの「シンプルで起承転結が明らか」。これもブルース共通
の特徴である。
JAZZにおいては、そんな定まったコードと曲想をベースに、各プレーヤーが独自の解釈によって、その都度メロディーを自由に紡いでいく。つまり一期一会のアドリブ演奏というわけだが、このあたりが実にエキサイティングで、なおかつ極めて味わい深い。
そこでテンカラだが、長短大小の違いはあるものの、竿、ライン、ハリス、毛バリと、4点のタックルに関しては全流派とも一定で、しかも全て直結なので実にシン
プル。
竿を振り上げて振り下ろし、ラインを舞わせて毛バリを飛ばす。この起承転結がキャスティング動作の基本であって、一定のリズムを刻むことによってそれをスムーズに行なうことができる。
ただし、毛バリを流すポイントだけは瀬あり淵あり落ち込みありと千変万化。それぞれのポイントに適した釣り方は何かを、即時に読み取って魚を誘う。
毛バリを浮かべて流すか、それとも沈めて流すか、自然に流すか、動かしながら流すか……独自の読みと解釈、つまり魚を引き出すために、流れに応じた一期一会のアドリブが要求される。
JAZZのブル−スとテンカラ。双方共通の醍醐味は、シンプルながら即興的な部分が味わい深く、かつまたエキサイティングな点。
「テンカラを音楽にたとえるとしたらJAZZ」
川北卓史画伯のそんな振りに対し、私が応じた話の内容は以上だが、さて2002年のテンカラシーズン。そこではどんなアドリブが奏でられるのだろうか。
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