”染みる”


山野草の開花がテンカラのベストシーズンを告げる。
心弾む鮮やかな黄色がひときわ目に染みる。


キャンプの小さな焚き火が心を落ち着かせてくれる。
ロマンを語る友の瞳に、誰彼の笑顔が小さく映る。


流れに漂うカゲロウを追って魚が跳ねる。
パートナーとの波長が隙間なく同調し、ピタリと狙いが絞られる。


森羅万象の移ろいを、目と肌で愛でながら釣り場をそぞろ歩く。
「梅一輪 一輪ほどの 暖かさ」風流じゃないか。


「あーばらした」「どんな毛ばり?」「大きいのが居ますよ」「お見事」。
魚が居て友が居て。嬉しいねえ。


疎らな林に吹く風は、なぜか心に染み透る。
淋しいわけではないけれど、なぜか心に染み透る。
悲しいわけでもないけれど、やはり心に染み透る。


初尾花、尾花、枯尾花、薄、ススキ。
豊富な語彙は、季節を代表する存在ゆえか。
光る花穂が付く秋は産卵の季節。
魚の無事と来年の再会を念じて竿を納め、心静かに禁漁を迎える。 


渓愚の世界
プロローグ Action Season Catch & Release