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清流に生息する魚類のうち、カジカは最も不恰好な容姿を持った魚である。 いかつい三角形の頭部、その頂に突き出した寄り目、 いつも「イー」と言い続けているような真一文字に裂けた大口、地味な茶系を基調とした体色に迷彩 服のような斑(まだら)模様など、よくもこれだけまずい要素が揃ったものだと、ほとほと呆れ返ってしまう。 ではあるのだが、そうした容姿を愛敬とみる釣り人も少なくない。「本当にきれいな川でないとカジカは居ついてくれない」、そんな思い入れがあるからで、つまりカジカという魚は、彼らにとっては清らかな川の象徴的な存在だからなのだ。 カジカの居ないような川では、釣りの対象となるヤマメもイワナも育たない。それだけにカジカの姿を見ると安心できるし、だからこそ不恰好な容姿にも愛敬を感じるというわけで、多分に「あばたもえくぼ」式の見方ではあるのだが。 ところで、多摩川源流の小菅川では、このカジカの数がめっきり減ってしまった。流域の全戸に下水道が完備された平成四年以降の水質は問題ないのだが、過去に行われた河川工事などのツケが回っての激減・・ 事情に詳しい小菅村の人たちは、そう推測する。 そんな危機的情況をなんとかしなければ、という民意が高まってのことだが、小菅村漁協を中心としたグループによって、五年ほど前から建設的な試みが毎年行われてきた。各町村の協力を得て、同じ多摩川水系から採補してきたカジカの成魚を、小菅川本流に移植放流し続けているのだ。 キャッチ&リリース区間が設けられて以来、自然再生のヤマメとイワナは確実に増えてきている。加えて清流の象徴的存在ともいうべきカジカも増えてくれれば、理想とする昔のような小菅川の復活にまた一歩近づくことになる。 同川の保全に関心を寄せる村の人たちと釣り人たちの視線が、カジカという十センチに満たない魚に、今も熱く注がれている。 |
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