3 月 未来型釣り場のモデルケース


 三月三日土曜日。多摩川源流の小菅川が解禁日を迎え、例年どおり正午きっかりに今シーズンの釣りがスタートした。

 小菅川の場合、ヤマメとイワナの産卵を保護するための禁漁期は十月一日から。 したがって五ヵ月ぶりの解禁日はいつも賑わう。とりわけキャッチ・アンド・リリース(C&R)区間の起点となる金風呂地区の人気が高く、終日にわたって釣り人の往来が続いた。

 このエリアの特徴は、単に「C&R区間」というだけでなく、フライ、テンカラ、ルアーといった「擬似餌専用区」でもある点。すなわち魚を持ち帰らず、さらには、簡単に釣れる生き餌を用いることなく、あえて不利な毛バリやルアーで挑むエリアということになる。魚を保全しつつ一匹一匹をいかに面 白く釣るか……。制約があるからこそ面白いという、いわば未来型の釣り場なのだ。

 日本の釣りは、食文化と表裏一体で発展してきた過程が永い。そうした下地あってのことだが、ヤマメやイワナをターゲットとする渓流釣りの世界でも、釣った魚は食べて当たり前と主張する釣り人が今も少なくない。

 それとは対照的に、すでに釣りは食文化の一環ではなく、ゲーム性の高いスポーツ、と捉える釣り人もいて、その支持率も日増しに高まっている。海と較べ、はるかにキャパシティーの少ない淡水域では特にこの傾向が強い。

 そんな具体例のひとつが小菅川の金風呂地区であって、新たな釣り場作りのモデルケースとしても注目を集めている。

 半ば漁ではなく、純然たる遊漁としての釣りを。そんな思想を持ちはじめた釣り人たち。金風呂地区の人気の高さは、だからこそにほかならない。


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