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| 「ヤマメの里」に春 関東山地の山々が萌黄色に染まると、多摩川源流部にある山里、小菅村の中央部を流れる小菅川に活気がみなぎってくる。春の訪れと共に、カゲロウやユスリカといった水棲昆虫の羽化が盛んになって、それを補食しようとして反転するヤマメのきらめき、跳躍による水しぶきなどが目立って多くなるからだ。 ヤマメが餌を大量に摂取しはじめるこの時期、その体色には本来の艶(つや)と輝きが宿ってくる。銀色の魚体に桜色の側線、パーマークと呼ばれる薄墨色をした小判形の体紋、尾ビレの上下を縁取る橙(だいだい)。そしてサケ科特有の鋭い流線体系。「渓流の女王」の名にふさわしい美しさだ。 そんな水の世界を覗いてみたい人にお勧めなのが、小菅川が奥多摩湖へと注ぐ金風呂地区でのウオッチングだ。というのもこの地区は、信じられないほど多数のヤマメが目撃できる極めて希有(けう)なエリアだからだ。 環境の悪化や釣り人の急増などによって、どこの川も魚が激減している。日本で初めてヤマメの養殖に成功したことから、元祖「ヤマメの里」を自認する小菅村も例外ではなかった。ヤマメの姿が拝めるのは、月一回の成魚放流から数日間だけ。それほど不景気な川だった時期も過去にはある。 だが平成十一年三月、金風呂地区から上流二キロへかけての区間が、釣った魚を持ち帰らないで放す区間、つまり「キャッチ&リリース(C&R)区間」になった。小菅村の漁協がこれに踏み切った動機は、「昔のように大きな魚がたくさ泳ぐ川の復活」。日本において、漁協主導によって同様の区間が設定されているのは、他に群馬県の神流川と山形県の寒河江川だけ(平成十二年四月現在)。 それから一年あまり経たにすぎないが、その結果はすこぶる良好といっていい。ヤマメが目減りすることなく残るようになったし、産卵床も増えた。 金風呂地区をウオッチングしてみれば、C&R区間設定の意義とは何かを、はっきりと確かめることができる。 |
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