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| 五月のはじめ、満点の星を焦がして燃え盛る「日本一の松焼き」が見どころの源流祭も終わり、標高五百メートルを越える小菅村にも汗ばむ初夏がやってきた。 小菅川の下流部では、この季節の到来を待ちわびていたコイ科の魚「ウグイ」による、産卵という年に一度のドラマが進行している。 その光景たるや華やかなもので、次々と溯上してくるウグイの群れで、浅瀬という浅瀬が赤一色に染めあがる。産卵期だけの特徴だが、雌雄ともウグイの体側には、頭部から尾ビレの付け根にかけて、三条の赤い婚姻色がくっきりと宿っているからだ。ウグイの地方名「赤腹」そのままの姿態である。 黒い紡錘形の魚体を飾る三条の婚姻色は、降湖型ないしは降海型のあかしであって、すなわち小菅川のそれは、奥多摩湖からの溯上を明瞭に物語っている。ちなみに、太平洋側では東京湾以北、日本海側では富山湾以北に分布するマルタウグイ、あるいは新潟、山形、秋田の三県で生息が確認されているウケクチウグイの婚姻色も同じ赤だが、この二種に関しては腹部を飾る一条のみなのでいくぶん地味。 産卵初期は三十センチ前後に育った大型の群れが、後に中小型の群れが続々と小菅川に押し寄せ、三ミリほどの卵を次々と浅瀬の石に産み付けていく。数十匹という赤い集団が大挙して川を占拠し、一丸となって行動するさまは壮観というほかはなく、まばゆいばかりに旺盛な生命力がどっと伝わってくる。 そんなドラマも6月初旬まで。黒い岩盤を飾ってきた赤いツツジの終焉(しゅうえん)とも重なって、小菅川の景色は、その後ちょっぴり寂しくなる。 |
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