むかしばなし
河童退治

- 昔、とある川に、悪さをする河童が住んでおった。
その大きさは六、七才の子供ほどにもかかわらず、たいへん力が強かった。
馬を川に引き込んで溺れさせたり、通る人に無理やり相撲をいどんで投げ飛ばしたり、また村に現われては便所の下から手を伸ばし、女子の尻を撫でたりする始末…村人はほとほと困り、何度も退治をしようとした。
しかしどんな力自慢が挑んでも、百人力の河童にはあっさりと投げられてしまう。刀を持った侍も、強烈な屁をかけられて、あっというまに追い払われてしまった。
村人たちは河童に悩まされる日々が続いていた。
そんなある日、村に住む一人の子供が言いだした。
おらが、河童をやっつけてやる、と。
子供の名前は太郎といった。太郎は身体も小さくて、病気ばかりしているような子供だ。大人たちは大笑いして、全く相手にしなかった。
しかし、太郎には考えがあったのだ。
太郎はキュウリを持って川にいくと、河童を呼んだ。
出てきた河童に太郎は深々と頭を下げ、キュウリを差し出した。
おねがいがあるのです、どうか聞いてください。
てっきり、また誰か自分を退治しにやってきたのだろうと思った河童は、太郎のていねいな態度に驚いた。大好物のキュウリを持ってくるとは、なかなか礼儀を知っている子供じゃないか。
太郎は河童に、もう悪さをしないように頼んでみた。
キュウリをかじってきげんをよくした河童は、話によっては考えてやってもよい、と言った。その話とは、毎日新鮮なキュウリを二本ずつ届けること、そして村の女子を嫁に差し出すということ…。
無理な注文だったが、太郎は愛想良く引き受けた。
河童はいよいよ嬉しくなってしまった。昔から、人間の嫁が欲しいと思っていたのだ。
それでは、明日また来ます。太郎は言った。明日はあなたのお嫁さんをつれてまいります。今日は、お願いをきいてくれてどうもありがとう。太郎は帰りぎわにまた、深々と頭を下げた。
河童も、にこにことしながらおじぎを返した。
太郎はこれを待っていたのだ!
河童は、あっと声を上げた。おじぎをしたひょうしに頭の皿から水がこぼれてしまったのだ。皿の水を失った河童は赤子よりも弱い。太郎はやすやすと河童を組み伏せてしまった。
そのまま村にひきずっていこうとする太郎に、河童泣きながら頼んだ。おねがいです、村に連れていかれたら私は打ち殺されてしまいます、どうか助けてください。
太郎は、話によっては考えてもよいと言った。
河童は太郎の話をのんで、ほうほうのていで逃がしてもらったのだ。
それから、太郎の家には、毎日新鮮な川魚が二匹ずつ届けられるようになった。
そして、村の田畑はどんな日照りのときでも水が枯れなくなったということだ。
Back to 河童