神隠し
- 最近は行方不明者が、山奥で死体になって発見されるといった物騒な殺人事件が多いようだが、一昔前までは、誰かが行方不明になると、その多くは天狗にさらわれたとみなされたものだった。そうした事件や体験談が、実際数多く残されている。
神隠しにあった者は、天狗の棲まう異界へと連れ去られて行ったのだと考えられた。こうした行方不明事件は『神隠し』と呼ばれるように、天狗は山の神だと考えられていたようだ。
神隠しに会ったものには、そのまま帰らなかった者と、無事に帰ってきた者とがあるが、帰ってきた者の中にも、数時間、数日、数年とその期間はさまざまである。
神隠しにあって、無事に帰った者は、行方不明になった場所からはるか離れた所や、登り得ないような高い木の上、人の滅多に行かないような山中で発見されたりしている。こうした人々の話しによると、天狗に連れ去られ山中をさまよい歩き、樹上で寝起きをさせられたとか、僧の姿をした大男に導かれ一緒に空を飛び回ったとか、美しい所へ連れて行かれご馳走をふるまわれたということだ。
神隠しにあってもそのまま帰らない者も多くいたわけであるが、しかしながら無事帰ってきた者の証言からも、一体いかなる理由、目的で、神隠しにあったのかは、あいまいなものがほとんどである。
このように、異界の存在を信じていた人々は、原因不明の行方不明者の失踪理由を、神隠しとして、山の神である天狗を介入させて説明していたわけである。
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